選手の心をつなぎとめるには

日本のプロボクシングを統括しているJBC(日本ボクシングコミッション)が、毎月、日本ランキングを発表しているのはご存じのとおり。で、この日本ランキング、オールドファンにとっては「各階級10位まで」というのが当たり前だったんだけど、この“人数”がここ10年あまりでしょっちゅう“変化”してるんですよね。これって案外、ボクシングファンでも気づかなかったりするんじゃないかな。ちょっとその推移や付随するトピックスをまとめてみます。

 2007年4月から各階級12位制となり、2009年9月からは、それまでミニマム級からミドル級まで13クラスだった“ランキング枠”に、スーパーミドル級、ライトヘビー級、クルーザー級、ヘビー級の枠も設置されました。でも、当初この4階級は、チャンピオンはもちろんのこと1位以下のランキングも空位。2011年8月に三浦広光(帝拳)がスーパーミドル級1位になるまでそれは続いたんですね。

 そして、2013年7月に藤本京太郎(角海老宝石)が、片岡昇(不二)以来、56年ぶりの日本ヘビー級チャンピオンに。これは話題になったので、知ってる方もいますよね。でも、「他競技から重量級選手を呼び込もう」とJPBA(日本プロボクシング協会)主導で始まった作戦は、結局、中途半端なまま。スーパミドル、ライトヘビー、クルーザーはチャンピオンが不在のまま、どころかヘビー級までの4階級に人材は依然、ほとんどいない状況なのであります。

 話しは戻りましてランキング。2013年10月から各階級15位制に。で、
今年4月から、12位までが「日本タイトル挑戦権」のあるランクで、それ以下もずらりと順位づけされることになったのです。

 当初は、スーパーフライ、バンタム、スーパーバンタム級で最大21位まで。8月にはスーパーバンタム級が23位まで。9月から24位(これもスーパーバンタム級のみ)までに伸びています。ただし、軽量級、重量級はずーっとスカスカの状態。けれど、JPBAでは、「A級選手(8回戦以上を戦えるライセンス保持者)には、すべてランキングを与える」という壮大な構想を持っているとのこと。
 まあ、いちばん“ランカー”の多いスーパーバンタム級を例にとってみれば、「日本スーパーバンタム級65位」なんてのもありうるわけです。これ、自慢できるのかなぁ。いや、いまの24位とかだって、どうなんだ?って感じなんですが。

「自分の立ち位置がわかりやすい」、という意見もありますが、下位にいけばいくほど、ただたんに順位をもらってるだけとしか思えないんじゃないかなぁ。「ランクを持っているほうがモチベーションが上がる」という意見も聞きましたが、日本ランキングは10位、12位まで、とビシッと決めた方が、飢餓感は増えて、やる気も倍増するんじゃないでしょうかね。
で、これがいちばん驚いた。
「目標を持たせないと、最近の選手はすぐにやめてしまうから、ランキングを与えることによって、人材をキープするのだ」と。
これ、おかしくないですか?

 つまり、全部ひっくるめて言わせてもらえば、「ファイトマネーの問題」でしょう。
日本チャンピオンになれば、だいたいこのくらい稼げるっていう“指標”がしっかりしていれば、ランクなしの選手はそこを目指していける。
いまの“ベルト”や“栄誉”だけでなく、相応の額をもらえるとなれば、よりいっそう頑張れる。でも、そこがうやむや。

 世界チャンピオンだって、みんないくらもらってるかわからない。公表すると、選手によって“差異”があるから、払ってないジムが払ってるジムに「公表しないでくれ」と頼んでいるという噂も……。プロ野球やサッカー、テニスなどその他の競技では、稼いだ金額、年俸をどんどん出している。それを見た子どもたちは、「ボクもああやって稼ぎたい!」って、その競技に入っていく。プロスポーツってそういうもんでしょう。妙なところで足並みをそろえようとするから、どんどんおかしな方向に進んでしまう。日本ボクシング界が、いつまで経ってもあか抜けない理由です。

都合の悪いことにフタをし、ランキングを“与える”ことでごまかそうとする。
これじゃあ選手の心をつなぎとめられないし、ファンの想いもしらけるばかりです。

 JBCの認可が得られていなかった日本ユースタイトルが、最近認められました。だからなのかたまたまなのかわかりませんが、小田翔夢(白井・具志堅スポーツ)対利川聖隆(横浜光)、石澤開(M.T)対井上夕雅(尼崎亀谷)、大保龍斗(横浜さくら)対中山祐太(勝又)のユース戦3試合は、どれも技術を尽くした上での気迫の戦いで、「日本タイトルマッチ以上!」の声も多々ありました。でもきっと、彼らは「ユース・チャンピオン」の称号と、初めてのベルトを求めて死力を振り絞って戦ったのでしょう。だから、そんな彼らがさらに「これ以上」を目指していけるような「日本チャンピオン」、「世界チャンピオン」の“待遇”を求めたい。ベルトを巻いたことだけで満足してしまうような状況を改善したい。これはOPBFやWBOアジアパシフィックも同じこと。WBO・APなんて、世界のベルトとなんら変わらないんだから。それこそ、「ベルトだけがモチベーション」だったら、満足してやめちゃいますよ。

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