モノマネ大いに結構!

“人のモノマネ”とか“パクリ”って、なんだか言葉の響きはよろしくないですが、ボクシングに関していえば、「全然問題なし」だと思うんです。
 そりゃもちろん、中国のドラえもんとかガンダムとかウルトラマンをモロパクッといて、「ワタシタチノオリジナルアルヨ」って言われちゃかなわないですが。ボクシングの場合は、完全に“オリジナル”なんて、もはやありゃしませんからね。

 ボクシングでは、ベースの動きがありますよね。打つことに関しては、ジャブ、ストレート、フック、アッパーカットのこの4種類しかない。よけることに関しては、パーリング、ウィービング、ダッキング、ブロッキング、ショルダーブロック、ヘッドスリップ等々…。それらを組み合わせ、掛け合わせることによって、無限の動きが編み出されるわけだし、選手個人個人の軌道やリズム、タイミング、テンポも違うわけですから、さらに無限に広がるっつーわけです。

 最近目につくのは、サウスポーと対したオーソドックス選手の前足(左足)。これだけでピンと来る方もいるでしょう。そう、井上尚弥(大橋)の左足です。ファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)の前足(右足)の内側に、左足を入れて左ジャブを打った、KO直前の動作ですね。

 日本では、古くから“常識”“定石”が脈々と言い伝えられてきて、それはそれで競技の発展に大いに貢献しているわけですが、その一方で、「そこにとらわれすぎる」と足を引っ張られ、足元をすくわれて穴に落ちてしまうこともあるのです。

 左構えと対峙する右構えの選手の場合、「左足を相手の右足の外に置く」ことが“定石”とされています。それは、時計回り(左回り)をしやすい、相手の左パンチから遠ざかる、という理由からだと思いますが、はたしてどうなのか。

 よく、セコンドから「回り方、逆!」なんて声が飛んでいますが、それも時と場合によるもんだと思うんです。どちらの選手が主導権を握っているかにもより、相手に“回らされている”のならば、その指示でよいかと思いますが、そうでない場合も多々あり。いわゆる、“定石”とは逆回りだけど、このほうが感覚が良い、やりやすいという場合も多くあります。せっかく“逆回り”でペースをとっているのに、それを制しては本末転倒ですよね。

 井上尚弥の踏み込みは恐ろしく速い。サウスポーに対してのあの踏み込みは、なかなかできない。いや、ほとんどの選手の中に、あの踏み込みは頭になかったかもしれません。おそらくやられたパヤノも。でも、「あれもアリ!」ってみんな気づいたはずです。

 あの衝撃のKOから、インサイドへの踏み込みをよく見かけます。それこそ4回戦とか6回戦の選手に至るまで。たぶん、井上尚弥のおかげで、彼らの頭が自由になったんでしょう。それはそれで素晴らしいことだと思います。ルールに則っていれば、ボクシングの動きに制限を入れるのは不要です。「こうやって動かなければならない」なんて決め事があったら、相手に動きが丸わかりじゃないですか。“定石”“常識”は尊いけれど、それに縛られることなんてありません。

 かつて、大橋秀行(ヨネクラ)が世界タイトルを奪取した崔漸煥(韓国)戦で見せたKOパンチ、左ボディブローは、当時、国内の選手の間で大流行しました。
内山高志(ワタナベ)の、右ストレートをボディに連発しておいて、ボディと見せかけて顔面に右をぶち込むのも流行った覚えがあります。

 でも、これらは流行で終わらせてはいけません。パクッて自分のものにするのが大事。そうして自分仕様に仕上げていけばいいのです。

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