田中恒成の“すり足”と木村翔の“昭和の香り”

 井上尚弥(大橋)の余韻がまだまだまだまだ延々と続いていきそうですが、
この1ヵ月、日本のボクシング界はべったべたに濃密だったんじゃぁないですかー!

 ナオヤ・イノウエの破壊力は凄まじいかぎりですが、武田テバオーシャンアリーナ(名古屋名物・手羽先を思い出してしまうネーミング!)の田中恒成(畑中)vs.木村翔(青木)、横浜アリーナの前日に後楽園ホールであった末吉大(帝拳)vs.三代大訓(ワタナベ)、そして、井上尚弥と同じリングで行われた拳四朗(BMB)! 
この3試合も、ボクシングファンにとっちゃ、お酒を飲みながらあーでもない、こーでもないと語り合い、余韻に浸り続けたい試合でしたよね。
しっかし、こんな名勝負たちを吹っ飛ばしてしまう井上尚弥、まったくもって、罪なヤツです(笑)。

 田中vs.木村は予想どおり、いやそれ以上に凄まじい試合でしたね。
井岡一翔vs.八重樫東(大橋)に匹敵する、いやいやあの試合を乗り越えてしまったくらいのインパクトでした。
戦前は「技術の田中」「パワーとメンタルの木村」なんて言われてましたが、互いのハートがガッチリとぶつかり合って、ボクシングが人々に感動を与える理由をすべて詰め込んでいましたよ。
判定は2−0で、しかも2ポイント、4ポイント差という接戦。でも、全体を支配していたのはやはり田中だったと思います。
 田中、実は接近戦強いんですよね。みんなそこがノーマークだったと思うんですが、田中の後釜王者に座り、評価がうなぎ上りのアンヘル・アコスタ(プエルトリコ)に初黒星を与えた試合でも、近い距離でボディブローをズバズバと決めて攻略したんですよね。
 体の力では上回ると思われた木村を後退させたのは、田中のフィジカルの強さに加えて、ボディブローの巧さ、そしてインサイドからサイドへ瞬間移動する攻防があった。
田中は、中・長距離では左右の足にシフトウェートするのが小刻みで、するりと距離を近づけるのはすり足。
サイドへシュッと抜けるのもすり足。これ、彼がボクシングを始める前にやっていた空手で土台ができているんですね、きっと。

 アコスタも田中と戦う前に、「彼はすり足が上手い。カラテの影響だろう」って指摘してました。で、アコスタもそのすり足に屈してしまった。
 あのすり足、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)のように見えませんか? 
田中本人も一時期、ロマチェンコの影響を認めていましたが、でも、いまじゃ完全に「恒成バージョン」に仕上がりつつある気がします。あれ、井上尚弥にはないフットワークで、井上とはまた違うスタイルで、世界中の注目を集める可能性があると思うんですが、どうでしょう!
 しかし、いかんせん、テレビの全国放送がなかったのが悔やまれます。頼むよTBS!
フジテレビに田中恒成で対抗してくれぃ!

 ペースを奪われながらも、やっぱりメンタルと体の強さを見せつけてくれた木村翔。井岡に負けてしまった八重樫のように、敗れてもなお、男を上げたと思うんですが、いかがでしょう。
田中に先制され、右目を腫らして「ストップされちゃうのか?」って不穏な空気も流れている中、最後の最後まで殺気をもったブローを振り抜き続けた。あれ、ホント凄いことですよ。それに、最終回の右の相打ち3合! まるでお互いが計ったかのように重ね合わせてましたが、木村、実はあの右カウンターを練習してたんですよね……。
そこに乗っかった田中恒成も本当にカッコよかった。

 木村、試合前のリングチェックが終わったとき、ファンに囲まれて写真撮影やサインに丁寧に応対してましたよね。とことん“いい男”です。
 でも、リングに上がって、トップロープに足をかけてストレッチしてるとき、たしか左足をかけたときに苦痛の表情を浮かべたんだよなぁ。中国での防衛戦からわずか2ヵ月。オーバーワークとかあったんじゃないかなぁ。田中恒成も試合直後の控え室で「木村選手は万全に仕上げてきたというけれど、どうかわからない」って吐露してましたし、いつもの前へ出る推進力が、ちょっと弱かった気もするし。田中が出させなかった部分も多分にあるとは思いますが。
 進退保留のまま、時は過ぎていきますが、まだまだ木村翔のボクシングを見たい。いや、“昭和の男”に触れていたい。
 木村は今回の決闘を経て、ボクシングの怖さももちろんあらためて知っただろうし、でも、ボクシングの深さ素晴らしさをいままで以上に知ったと思うんですが。だからこそ、さらに輝くのはこれからだ! と思うんですが、みなさん、どう思いますか?

 …って、また末吉、三代、拳四朗のことを書けなかった。次回、次々回に引っ張っても色褪せませんよね!

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