バンコク遠征記 〜2010年WBA世界Sバンタム級タイトルマッチ 李冽理vsプーンサワットの舞台裏〜

前回アップした記事
「バンコク不正行為の一部始終」
はかなり反響があった。
これを笑い飛ばしながら話せるってのは、
あくまで勝ったからだよね。

大変なことやつらいこと、
納得いかないことがあっても、
最後には笑いとばせなきゃいけない。
笑い飛ばせるようにするには、
過去より今が楽しいと思えなければいけない。

バンコクには撮影のため弟が同行。
NEW機材を購入し、
新たな撮影技法、編集方法を取り入れている。
教材はググるかyoutube。
ソフトもFinal Cut ProからAdobe Premiere Proへ移行。
動画のクオリティもあがっている。

先週日曜日、
遠く離れたウィラポンのレストランに向かうため、
運転手付きのレンタカーを借りた。
往復8時間と聞いていたため(結局10時間)、
値段高くてもいいから、
とにかくでかくて広々と座れる車を、
と注文したらハイエースのラグジュアリータイプがやってきた。

朝9時にホテルまで迎えにきてもらう。
車に乗り込むと、
サングラスをかけたおっさんが踏ん反り返って座っていた。
「だれ?
人の借りたレンタカーでこんな偉そうに座れるおっさんは?」
俺もこういうおっさんになりたい。


一番右で、基本的に小指を立てている赤い服を着たおっさん。
彼の名前はMr,カオ。
プーンサワット・クラティンデーンジムのチーフトレーナーだった。
プーンサワットは元WBA世界Sバンタム級チャンピオン。
細野悟(大橋)、木村章司(花形)相手に防衛成功。
当時、日本フェザー級王者だった李冽理が1階級落とし世界挑戦。

2010年10月2日(土)後楽園ホール
WBA世界Sバンタム級タイトルマッチ12回戦
プーンサワット・クランチィンテーンジム 
vs 
李冽理

110-118 , 114-115 , 113-115
絶対不利と言われた李冽理が、
プーンサワットを攻略し世界のベルトを獲得した。

今見ても、
WBA世界Sバンタム級・・・・新チャンピオン!
この「新」の瞬間は震える。

俺は李冽理のチーフトレーナーだったから、
彼と当時の話で盛り上がった。
Mr,カオは開口一番、
「あの試合は、プーンサワットが勝っていた。」
老害。

試合前、
挑戦者である李冽理のことは全く問題ないと思っていたらしい。
事実、公開練習時の取材でも、
彼は李との試合が終わった後のプランばかり話していた。
次はアメリカ!って。
どうも、この試合のクリア後にトップランクとの契約が決まっていたらしい。

Mr’カオはルディ・エルナンデスへの不満をぶちまける。
この日、俺は李冽理のバンテージをルディに頼んでいた。
世界戦では必ず両陣営の立会いのもと、
バンテージを巻く。
李冽理のバンテージを巻く際は、
プーンサワット陣営が。
プーンサワットがバンテージを巻く際は、
横浜光陣営が立ち会う。

前日計量の際行われるルールミーティングで、
19時に両陣営立会いのもとバンテージを巻くと取決めをしていた。

試合当日。
控え室内で、壁にかけられた時計を確認しながら、
俺たちは静かにプーンサワット陣営を待っていた。
時計の針が19時を指した。
ルディは立ち上がり、冽のバンテージを巻き始める。
まだタイ陣営は来ない。


「まだ、アイツら来てないけど」
ルディ
「俺は昨日19時に巻くって言ったんだ!」

なぜか、俺が怒られる。
一応、俺はスタッフに声をかけてタイ陣営に早く来るように伝えさせる。
数分して、タイ人がやって来る。
すでにバンテージを巻いている状況に、
「ダメだ」と言って来る。
「俺は昨日19時から巻くと言ったんだ!
お前らが来てから巻くとは言ってない!
お前らが時間通りに来なかっただけだ!」
ルディはタイ陣営を怒鳴りつけながら、
バンテージを巻く手をとめない。
逆ギレされたタイ人は、
圧倒されて何も言えなくなる。

前日の取り決めは、
19時、かつ、立会いのもとなんだけどね。
こういう時は
先にキレたほうの勝ちなんだ。
俺もこういうおっさんになる。

Mr’カオは8年たった今でも不満言ってたけど、
それから彼は時間を守るようになったに違いない。
事実、
今日も9時前には俺のホテルに迎えにきてくれてたし。

彼の不平不満は続く。
「日本はダメ。
日本人のパンチが当たってなくても、お客さんはワーワー叫ぶ。
プーンサワットがパンチ当てても、誰も声を出さない。
フェアではない。」
自分たちのお国のことは棚に上げ、
ここまで言いきれる面の皮の厚さ。
俺もこういうおっさんになる。

当時は、
刺し違えるくらいの気持ちで戦っていた。
今となったら
酒を飲みながらすべて笑い話。

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。