高橋竜平、敵地タイでIBF地域ベルト奪取


12月20日
IBFパンパシフィックSバンタム級タイトルマッチ
試合当日、
ウィラポンがバンコク入りしているとの話を聞いたため、
出場選手はトレーナー陣に任せ、
わずかな時間だが会いに行ってきた。

試合時間が迫っていたため、
バイクタクシーで会場まですっ飛ばす。
交通標識は関係ない。
対向車線から車が向かってきても、
わずかな間を見つけたら対向車線に躍り出て突破していく。
赤信号は一時停止。
歩道は徐行。
リアルグランドセフトオート。
俺、ノーヘルなんだけど。


劇場型の試合会場。
俺が到着した時には、
マイク・タワッチャイvsTJ・ドヘニーのIBF世界タイトル挑戦者決定戦の真っ最中。
この国では、
主にメインイベントから試合がおこなわれる。
高橋の試合はこの後の予定だ。
2Rほど見て、
階下にある控室に案内されて向かった。

「なんやねんこれ?」

セクシーな衣装に下着、かつら、メーク道具から小道具。
俺は駆け足で会場に戻り関係者に訊ねる。
「ここの劇場って?」
「オカマショーですよ」

続々と体躯のいい(俺たちよりもデカい)レディボーイたちが衣装部屋に集まってくる。
今夜もボクシングイベント終了後、
ショーが開催されるという。

高橋がバンテージを巻き、
来るべき決戦へ向け、
アップに励んでいる。

そのすぐ横で、
レディボーイたちが髪を巻き、
来たる舞台へ向け、
メークアップに励んでいる。

高橋が目を瞑り、精神を集中させる。
そのすぐ横で、
レディボーイ達はスマホでゲームやりながら、みんなでキャッキャ騒いでいる。

計量の秤に細工をしたり
会場まで不必要に遠回りしたり、
わざと会場内を暑くしたりなどの嫌がらせ行為はよく聞いていた。
ただ、こういう戦略でくるとは思わなかった。
タイ特有の、アウェーの洗礼

それがじつは違った。

タイのボクサー、陣営もみんな、
この衣装部屋とレディボーイ達を避けていたのだ。
同じタイ人でも、
やはりレディボーイからは距離を置きたいらしい。
彼らは廊下などでバンテージを巻き試合前の準備をしていた。
「言ってよ」

俺たち日本陣営とTJドヘニー陣営だけが、
この衣装部屋を使っていたというリアル。

ただ、TJドヘニーは1試合目で試合準備が早かったため、
彼らの準備中は、衣装部屋にオカマはいなかった。
実際、オカマたちは今の時間に続々と出勤し始めている。
香水プンプンさせて・・・
まぁ、ちょっといい匂いだけど・・・

今さら移動もできない。
同行したボクサー望月直樹は勝手に仮装プレイに興じている。
「ちょっと…気持ちよくなってきました」

わざわざ日本から連れて来た意味が全くない。


だが、うちの選手は逞しい。
この程度のトラップは乗り越えてみせる。
5RTKO勝利でIBFパンパシフィックタイトル獲得。

試合を終え、
高橋はベルトを巻いて意気揚々と控室に戻る。
黄色い歓声、拍手喝采、指笛で盛大にオカマ達に出迎えてもらい、
調子にのった高橋もまたそれを煽り、楽しんでいる。
試合会場よりはるかに、
控室のほうが盛り上がっている。

奥から出てきたピンクのワンピースを着たこのオカマは、
「キスミー」
と細い猫撫で声で俺に抱きついてくる。
なぜおれ?
はい、はい、
と振りほどこうとしても首を抑えられて力が入らない。
太い野武士の声で
「キスしなさいよ」
と囁いてくる。

抵抗できなかった。

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