日本タイトルマッチの重みと、さらば金子大樹

「自分の人生をかけて」
20代で言葉にするとちょっとチープ。

ただ、そういうことなのかもな、って振り返れる試合が俺にもひとつだけあった。
2008年3月15日。
日本タイトルマッチ2度目の挑戦だった。
対戦相手は中森宏。
前評判では、圧倒的に中森だった。
この試合が決まってから、
俺に3月15日以降はなかった。
日本チャンピオンになりたいとかじゃないんだ。

奴に勝たなければ、
俺の今までは一体なんだったんだ?

刻一刻と’その日’が近づいてくる。
心身ともに疲弊していく。
いい日もあれば、うまくいかない日もある。
試合なんかなきゃいいのに、
って思う日も正直ある。
対戦相手が怖いんじゃない。
結果が出るのが怖い。
恐怖心や不安感を拭うためにやれることは、
ただただ一心不乱になることだけだ。

自分を信じるのか、
開きなおるのか。
終着点は人それぞれ違うだろうけど、
どこかで自分の中でケジメをつけ、
腹をくくる瞬間がくる。

ベルトが腰に巻かれた時に、
ふと現実に戻る。
俺はこれが欲しくて、やってきたんだと。
そして、勝手に涙が溢れてくる。

ひと昔前までは、
日本タイトルを幾度も防衛してきた人間が世界に挑む権利を持つ、
というロマンがあった。
世界に届かなかったものの、
金子大樹がボクシングファンから認められた理由は、
彼の日本王者時代の圧倒的な存在感だろう。

華々しく散った世界タイトルマッチ。

最後は、
16歳で上京するきっかけにもなった、
死にたいほど憧れた畑山隆則氏からの花束贈呈。

引退式翌日、
昨日の引退式はよかったね、
なんて心地よい二日酔いの朝。
マッチメーカーからの電話で目が覚める。
「急遽なんですが、
12月9日
ニューヨーク
マジソンスクエアガーデン。
ロマチェンコvsリゴンドーのセミファイナルで金子大樹どうですか?」

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